キリムの店*キリムアートアトリエ
【Kilim Art Atelier】 キリムと絨毯販売
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ex57 マラティア・キリム

産地 マラティア MALATYA KILIM
年代 1905年頃
大きさ


マラティアのチフカナット。
デザイン的には同じメダリオン模様でも、これは小さな櫛模様を積み上げる方式を採用。
この三角形は元々護符であり、それに櫛を加える事でより邪悪な物に対する牽制の意味合いが加味されている格好です。
この櫛模様を結集して大きな星模様を描く形は、レイハンルが得意とするデザイン。
レイハンルでは、メダリオンに櫛模様を用いても窪みは空けておき、髪飾り等を入れますが、これは隙間を開ける事をせず、徹底して櫛模様で埋めてあります。
しかもこのマラティア、一つ一つの櫛模様が小さい分、色糸の切り替えの手間が増え、更にその中に色数の多いソロモンの星があるので、織り手にとって気持ちの休まる所が無いというのが本音でしょう。
これがもう少し単調なものであれば、同じ模様の繰り返しによる単純作業で、我慢強く織り進む事で出来上がるとも考えられます。
そういう点では、まだ経験の浅い若い娘さんが制作するのに向いるかもしれませんが、このマラティアに限っては必ずしもそうとは言えません。
全体画像では分り難いですが、画像上で上に行くほど手が込んだ装飾となり、全体的に櫛模様も小さく過密な模様配置となるのです。
一つ12p程度の櫛模様が、僅か5o程度(部位により違います。)ですが、同じストロークながら、圧縮されています。
加えて、この櫛模様は単にギザギザ模様を入れるのでは無く、それに縁取りと先端部には切っ先を置く手の込んだ仕事振り。
ソロモンの星の内径は、小さいところでは500円玉と同じ大きさ、極小です。
更に、ボーダーのベレケット模様も複雑化して、色の切り返しを多くする等、労苦を惜しまず、敢えて難しい作風に挑戦したのは間違いの無い所。
こういったどこか未熟な点も見えるのは、やはり若い娘さんが織ったものかもしれません。
彼女にとって、小さな櫛/護符模様の結集した大きな星は、近い将来、大人の女性になり、家庭を持つ事への期待と不安が入り混じった心境を彼女なりに表現しているようです。
どこか初々しいようにも見えるのはそのせいでしょうか?
また、間近で見ると、全体像の雰囲気とは違って、一生懸命に織り進んだ様子が手に取るように感じられ、手に取ると、ぎゅっと引き締まった織り密度の高い嫁入りキリムそのものです。
その分、少しくらい傾いてもそのままに織り進められるので、この様な形状になります。
糸質も良く、艶があるので全体的に暗めの色調になっていますが、古いキリムなので真っ黒は無く、黒い部分は焦げ茶色です。
また、櫛模様の白はクリーム色に彩色されたコットンが使われています。
ソロモンの星の使われている艶やかな緑はツルツルしていて、多分これはシルクです。



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