キリムの店*キリムアートアトリエ |
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fc169 シャルキョイ・キリム |
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巨大なシャルキョイの中でも一際大きなキリム。 縦方向の長さに対して、やや幅広に出来ており、15平米近くもあります。 初めてこれの存在を知ったのは、ブルガリア・セルビアを巡りながらシャルキョイについて調べていた2013年の10月頃。 当時、現地にただ一人残るバイヤーとお茶を飲みながら歓談していた時、相手の方も気持ちよかったのでしょう、このシャルキョイの写真を見せてくれました。 誰かが送りつけてきた画像ではなく、自ら出向いて撮影したものです。 当然、見に行く以上は買い取りに行っている訳ですから、写真だけ撮影して帰ったという事は商談が不成立。 早い話、手が出ない価格帯にあるのです。 シャルキョイは元から安いキリムではありませんが、更に高くなる理由が、年代は勿論の事、珍しいデザインや保存状態、そして、大きさです。 これはそのいずれもトップレベルにあり、15平米というサイズは全くもって私にはありがたくありませんが、欧米の大きな邸宅用には数少ない選択肢であり、この巨大サイズは重宝されます。 当然、このシャルキョイは顧客からの受注を受けて工房で制作されたもので、ミフラブ模様を思わせるデザインも、宗教的な側面は希薄化し、セルビアの地元文化と同化しており、セルビア語でも同じ生命の木の名と呼ばれます。 また、セルビアではもう1つ別の呼び名、このボーダーのデザインを考案したとされる女性の名前で呼ばれることもあります。 さてこの生命の木、一本の巨木から枝が広がる格好となっているのは、子々孫々まで繁栄する事を願うもの。 以前、オールドで似たタイプは見かけましたが、アンティークは初めて。 生命の木の先端(又は根幹)は神聖な色とされる緑が使われ、ミフラブのトップも兼ねるような格好です。 特に上下は問いませんが、木々が太陽に向かって枝を伸ばす格好で織り進まれ、2番目のボーダーの鳥も、同じ方向を向いています。 シャルキョイの最盛期である19世紀からそう時代が経っていない事もあり、何世紀にも渡って受け継がれてきた様々なオーナメントを組み合わせ、知恵を絞り出した成果がここに見られます。 勿論、それを可能にしたのが織り子さん達の技術。 曲線つづれ織りでのみで描写が可能となる風になびくような枝ぶりはシャルキョイならでは。 3〜4人がかりで制作に当たった為、部位ごとに織り手の個性が見られ、同じ模様でも配色や形が少しずつ違う、この大きなキリムならではの見る楽しみもあります。 色合いについては、工房の指導の下にあるので個人的な好みを反映したオレンジやピンク等は入りません。 そうした完璧な色の組み合わせを誇りつつも、一部には遊び心も取り入れられています。 少し話題は逸れますが、アナトリア等のキリムと違い、シャルキョイの大判には、正確さや精巧さを追求する事で生まれた独特の垂直機、ピロット・ルームが用いられました。 この巨大な機材が、人気のある工房では何台も稼働していたというのですから、スケールの違いがお分かり頂ける逸話でしょう。 掲載した画像のキリム表面に多少の折り線や凹凸が見えるのは、イスタンブルで長らく折り畳んだままにしてあったためです。 巨大過ぎて保管場所にも困る為、日本に届いたキリムをいち早く撮影した為、画像ではシワが残ったままとなっていますが、軽くアイロンを掛けたので今は復元しています。 このシワ等、一切をストレッチで整えてしまう事を考えましたが、このキリムの点検・修復を依頼したシャルキョイの修理で有名な職人に反対されました。 100年以上経過して、水洗いしても変形せず、この形を維持しているのですから、これは何もしない方が良いのだそうです。 無論、こちらは洗いにも特別なオーダーをしています。 手に入れた時、このシャルキョイの表面には毛羽が一杯でした。 大抵は使い込む事で自然に毛羽が取れるのですが、これは何世代にも渡り収納されたままなので、毛羽が邪魔して折角のシャルキョイの細かな模様が美しく見えません。 何人かのディーラーと相談した結果、洗う前に表面に残る毛羽を炙る事にしました。 オールドならまだしも、アンティークのシャルキョイをバーナーで炙るなんて想像できないと思います。 私もそうでした。 安いキリムとは訳が違い、熟練した職人が火加減を調整して少しずつ炙るので、片面に2時間、都合4時間も費やしました。 そして、プールを空にして水を張り、洗剤を入れてこれ一枚のみ単体で洗って貰いました。 クリーニング屋はこれ一枚に1日がかり、200ドル程も金額を請求されましたが、最高のキリムには最高の手入れが必要であり、自信を持ってそれに見合う品物だと言えます。 コンディションといい、最高のキリムなので、個人の所蔵の他、然るべきところで保管されるのが良いのだろうと思います。 |
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