キリムの店*キリムアートアトリエ
【Kilim Art Atelier】 キリムと絨毯販売
こだわりのキリムで作ったバッグや
クッションカバーも取り扱っています。
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fc223 シャワック・ヘイベ

産地 シャワック SAVAK
年代 1930年頃
大きさ 192〜198*94〜97cm
価格 150,000円


巨大なヘイベ。
おおよそ幅1m、長さ4m程のキリムからなり、片側の袋だけで1平米近い大きさ。
水平機で織り進めますからキリムは長ければ長い程、次第に一方向に曲がり易く、また、やや幅広になっていきます。
ヘイベの場合、折り返して袋にする際に調整も可能な為、気にせず織り進めます。
見たところ、多少の歪みは生じても、ほぼ想定していたところで折り返されており、まずまず精巧に出来ているというのが第一印象。

この大きさですから、何も入っていない状態でも手に取るとズシリとくる重さを感じます。
画像を撮影した後でこのヘイベ洗った時に思ったのは、水を含むと相当な重さに、荷物が入ると、人の力ではびくともしない重量になるという事。
当然、そのようなヘイベはキャメルバックです。
ただ、その様な重量があるものをこのヘイベに入れるには、おそらく強度が不足しています。

シャワックのウールは細く紡がれ、この糸で織り上げたキリムは薄くても頑丈に出来ている事に定評があります。
大型のヘイベになる事を考慮して、やや太めの経糸を使い強靭に出来ていますが、それでも袋の底は平織のキリムですし、袋の縫合は念入りに巻かれているものの、何処にも補強は入っていません。
ヘイベの口にも、閉じる為の細工がありませんから、実用性より装飾性を考えて制作されたものだと思います。
それ故に、全く損傷が無く今に残っています。

ただ、これが制作された頃はラクダによる運搬は既に消滅したかその直前。
どうしてこのような巨大なキャメルバックが必要でしょう?
彼ら自身が移動に際してこれを使った可能性は排除できないものの、彼らが使うヘイベは水も漏らさないような密なキリム&ジジムで織られた小振りなもので、これを使ったとは考え難いです。
推察するに、シナンにはラクダの駐屯地があり、ラクダ関連のグッズの需要がありました。
マラティア各地で制作が行われ、アラブギルではラクダ飾りが、シャワックにはこういったヘイベが少量発注されたと考えます。
ラクダによる運搬は消滅しても、ラクダそのものが消滅する訳ではありませんから、装飾品としての需要はある程度、続いていたでしょう。

これに描かれているモチーフはほぼ全てシャワックに固有のもの、ヤストック絨毯やキリムに見られるものと同じで、居住地域の近いドゥリジャンに似ているものもあります。
袋の表面、ドラゴンジジムを挟み込んでいる小さな羊の角の連続は、単調に繰り返しているように見えて、案外、色や形に変調が施されています。
裏面はもう少し羽目を外した様子。
この裏面の縞模様のブラウンをよく見ると、細かく色むらがあるのるのが見て取れます。
色合いは勿論、天然色。
袋表のマラティアに特有の緑の一部に使われている緑だけ、何か違うもので染めた様です。

これが何に使えるかは別にして、地元の人からも忘れ去られつつあるシャワックの伝統が、キャメルバックという形で受け継がれていた事実を知ることが出来るのは、これがあるから。

最後に、掲載画像はやや暗めの画像になるようにしています。
最近始めた撮影方法で、室内で目にした際の色合いに幾分、近付けようとしています。
その分、色のメリハリが分かり難くなる欠点もあり、まだ試行錯誤中。
あと、洗った事により、白色が明らかに綺麗になり、コットンはフレッシュな白さ、ウールもこれまた使われていない生成りのウールが分かるようになり、ほぼ画像の通りです。



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