キリムの店*キリムアートアトリエ |
HOME | | | お取り引き について |
| | 配送方法 と送料 |
| | お支払い について |
| | Q&A | | | オーダー フォーム |
| | お知らせ | | | サイト マップ |
fc208 バイブルト・キリム |
|
とても過密な装飾が施されたキリム。 正確な産地は分かりませんが、そのデザインや色合いからバイブルト辺りたりが揚力候補になります。 特徴的な模様の中にはシナンぽいドラゴン模様が組み込まれており、白い模様の内、より白さの際立っている所だけがコットンで、他はウールが使われており、マラティアではないけれど、影響を受けた近隣地域だと推察されます。 そこでもう一度、地図上で場所を確認していきます。 バイブルトから南下すると、エルジンジャン、エラズーと続き、その西側に位置するのがマラティア。 しかし、南下する場合にエルジンジャンにそびえる山岳地帯が障壁になります。 標高の高い所では富士山よりも高く、バイブルトとの県境にそびえ立つこの地は、古くから人々の往来を阻んできました。 その為、バイブルトとの往来にはシワスのザラ方面からなだらかな丘陵地帯を抜けるしかなく、バイブルトはそれより東方の世界との境界、要衝の地として、アルメニア語で城塞を意味する言葉がその語源となって今に伝わります。 再び話は脱線しますが、 ザラのキリムがバイブルトに似ているのは上記の理由によるものと考えられます。 しかし、このキリムがバイブルトと仮定したとして、ザラ方面のシワスとは趣が異なり、むしろマラティアに近いです。 脱線ついでに言うならば、エルズルムから南下する場合は、その山岳地帯の脇をすり抜けることが出来、エラズーを経てマラティアに辿り着きます。 その為、昔から、マラティアには多くのエルズルムが流入してきており、マラティアのお祈り用キリムがエルズルムそっくりなのはこういう事情が影響しています。 という事で、マラティアの影響が見られるキリムという事は、エルズルムとの関連性が伺えるキリムという事になります。 また、この十字模様があるのはエルズルムであり、バイブルトではないそうです。 (※例外もあります。) そして、コットンが使われている点を除けば、糸質がマラティアのものではなくエルズルムの糸なので、織られた地はエルズルムかバイブルトという事になります。 色合いは、どちらの候補もあり得えます。 以上の事から、仮説を立てるなら、マラティア北部のアルメニア人の多く住む地域に住んでいた家族の娘さんが、エルズルムとバイブルトの境界辺りに嫁入りして、かつて自分の住んでいた地元の文化的特徴を好むキリムに残そうとしたと考えられます。 その為、純然たるバイブルトというよりも、マラティア近隣地域の影響が色濃く残ります。 独特の撚りの強い色糸は、油脂分も豊富な所為か、光が当たると発色が美しく現れ、斜め方向から撮影した写真にそれが如実に感じられます。 用途は、室内に設けられた椅子の上掛けとして織られたもの。 チフカナットではなく、これが単体で一枚のオリジナルのキリムです。 コンディションが非常に良く、嫁入り道具として制作された後は一時的には使われたものの、その後は仕舞っておかれたようです。 非常に手の込んだ細工が施され、細い無地の縞模様を除き、よくもこのような模様で埋め尽くすデザインを考えたものです。 一段織り上げるのにも相当な手間暇を要したでしょう。 全体画像の下側と比べ、中段から上段に掛けては少し疲れてきた様子も感じられると同時に、色むら、色の変化が微妙に大きくなっている気がします。 織り進めながら気分が乗ってきたのかもしれません。 色合いも非常に多色使いで、赤系統だけでも濃淡の違いによって実に様々な色合いに染め上げられています。 黄色は見られませんが、黄色に染めた糸を藍染めして黄緑色にしてあるので、当時、この地方で染め上げる事ができる天然色のほぼ全てが含まれていると言っても過言ではないでしょう。 織り始める前の下図の用意、草木を使った何種類もの色糸を用意し、そのやりくりだけで頭の中が一杯でしょうし、何処をどう仕上げていくのか、その工程を考えると完成までの果てしない道のりをこの制作者は理解できていたと思います。 その上で、正に人生を掛けてこの制作に情熱を注ぎこんだのでしょう。 キリムを知る者なら、一目見ただけでこの努力と忍耐強さが分かります。 今はもう失われたアルメニア人の職人技を現在に伝えるものとして、鑑賞なさってはいかがでしょう。 |
|
戻る |
当サイトの写真・文章・他、すべての情報の無断複製・転用をお断りします。 Copyright © 2023 Kilim Art Atelier. All Rights Reserved. |
36 |