キリムの店*キリムアートアトリエ
【Kilim Art Atelier】 キリムと絨毯販売
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fc128 ハッキャリ・キリム

産地 ハッキャリ HAKKARI KILIM
年代 1910年頃
大きさ 237*163cm
価格 ご売約済み ありがとうございます


ハッキャリ地方のキリム、ローカルネームではギュルハザール“Gülhazar”“と呼ばれます。
詳しく知りたい方は、HAKKARI KILIMLERIを参照して下さい。
それによると、これは薔薇の花をイメージしたキリム、大小の菱形模様やオオカミの口までもが薔薇に例えられます。
同様にこの薔薇は紋章としての意味合いもあり、この薔薇模様を見ただけで、どの部族の物であるかが当時の人には分かりました。
特徴として、一枚のキリムに半分ずつのメダリオンとフックの模様を描き、チフカナットになって初めて一枚の大きなメダリオン(薔薇)になるのではなく、これは半分毎に、それぞれが一枚のキリムとして完結しています。
そして、姉妹でそれぞれのカナットの制作に係る事から、各自の持ち分である一枚のキリムとしての完結を優先させるため、左右の模様の整合性を厭わない事もしばしば。
こういったこの地方の特性が、この半分ずつ仕上げる手法によく合っているのだと思います。
その為、時として、模様の不整合だけでなく、長さも微妙に異なるのがハッキャリの特徴。
そう考えると、これは些細な模様のズレはあるものの、左右のメダリオンの端が接触しない事も手伝って、整合性を余り要求しないデザインになっています。
細かい所まで言えば、個々の模様は左右少しずつ趣が違い、隙間を埋める小さな模様はまちまちな様子。
また、左側のカナットの上端部分は、長さの調整の為か、右側の様な狭い青色のボーダーを置くのを止めて終えているのが見て取れます。
こうして見てみると、右側の織り手は希望通りのサイズに仕上がるよう圧縮気味に完結しているのに対し、左側は、右側と同じペースで織り始めたものの、等しく同じパターンを入れていったら、自然と希望のサイズより長くなってしまったという感じ。
色の違う三種類の経糸が使われる等、左右のカナット毎に織り手の性格や癖のような所が垣間見えてくるのも、鑑賞のポイント。
デザイン上、その狭いスペースの中にフックとメダリオンを交互に入れ、これだけの複雑なデザインを構成するのは容易い事ではありません。
尚、ギュルハザールではジグザグの流水模様が好んで用いられ、メダリオンのアウトラインも併せて、ノコギリ状になって外部を威圧する構図を取ると言われています。
敢えてこの小さなボーダーを二重にしているのも、織り手の自負する所があったのでしょう。
色合いでは、ハッキャリのキリムらしく、確かに左右で色合いが微妙に異なりますが、むしろこの程度なら大人しいくらいで、赤味のトーンの違いは、このキリムの色柄の複雑さと相まって、悪い感じではなく、むしろ面白さに繋がっています。
また、この地方のキリムの赤色は、茜を主体とした暗めの赤色や、もっと古いものでは深紅に近い赤やコチニール系の赤色が見られる中、これは少しコチニールを使ったような赤紫色。
触媒のせいだと思いますが、普通、余り見られない色彩です。
インディゴ由来のフィールド色も、右は青味が強く、左側は緑味のある青。
面白いと言えば、これに使われている緑色、右側の緑は真緑に近い色合い、でも、左側は下から3/2が黄緑混じりのこれまた綺麗な黄緑色です。
一部にピンクの退色した色合いや、柿渋色があり、天然色かどうか明言できないものの、100年程は経過したキリムです。
このクルディッシュな性格が遺憾なく発揮された素晴らしいハッキャリ、使われたキリムですが、何故か彼らは裏面を上にして使ったため、現在見えている正しい表面は未使用のまま。
返してみると、裏面は使われたキリムらしい幾分大人しい装いです。
いずれにせよ、使用された期間は短く、損傷するには至っておらず、丈夫な経糸に織り目を堅く詰めたキリムは実用向きです。
ただ、実際に使うのが惜しいキリムです。



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