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fc142 ハッキャリ・キリム |
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数あるハッキャリの中で最もメジャーなキリムの一つ、 “Canbezar”ジャンベザール。 総じて織り上げるのが難しいハッキャリの中で、卓越した技能と集中力が必要とされると言われるのがこのキリム。 その難易度を上げているのは、やはりこのデザインに欠かせない左右の整合性です。 ジャンベザールには、左右にそれぞれに半分ずつのメダリオン、2枚合わせて初めて一つの大きなメダリオンを描くタイプもありますが、こちらは、一般的な片側の一枚ずつが独立したタイプ。 片側だけで完結するものの場合、前者に比べ、左右の模様の整合性は低くて済むようにも思われますが、ジャンベザールでは、2枚が合わさる事で、真ん中にももう一つのメダリオンを描き出す様に出来ていますから、高い注意力が常に要求されます。 それも小振りなドラゴンメダリオンにする事は、それだけ手間がかかります。 無論、同じ模様で織られていても、一つずつのドラゴンメダリオンは面長だったり、ふっくらしていたりと、少しずつ形は異なっています。 それでも、肝心な所で釣り合いが取れるように苦心してあるのが、上手のジャンベザール。 普段、ハッキャリのキリムと言えば、左右の模様の整合性が取れないだけでなく、長さまで違うのも当たり前、その上、水平機で織られたキリムはハの字に湾曲し、繋ぎあわせる事さえ困難です。 それに比べると、これは異質なまでに正確に織り進められているので、細部の画像で見る程見応えします。 メダリオンの隙間を徹底して埋める手の込んだ細工、細くても撚りの強い糸を専用の櫛で詰めて織られているので、接写画像では経糸の凹凸がよく分かります。 茜と藍の使い方はこの地方の古いキリムにはお手の物、さすがというほか無い濃厚な色彩で青や青緑には色むらが美しく現れています。 ※画像では、青緑が水色ぽく見えています。 全体画像の左下部分、下から2つのドラゴン以下の赤色は他より少し淡い色彩。 これは東部地方、特にハッキャリのキリムに良く見られる手法で、二番染めの糸を使用している為で、稀に片側のキリムの半分前後がこの二番染めの糸で織られていることがあります。 高度な技術を誇るジャンベザールですから、意図して用いたと考えるのが妥当でしょう。 また、ハッキャリのキリムでは90年前後でも変わらぬ色彩が見られますが、これはそれらより古いキリムなので、密な織り地はやや薄手で、黒さえも合成色の重い黒ではなく、明るい場所ではほのかになすび色の気配すら感じられる良い色。 なお、このメダリオンや隙間を埋める模様は他のハッキャリ同様、薔薇にも例えられます。 |
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