キリムの店*キリムアートアトリエ |
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L303 シャルキョイ・キリム |
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シャルキョイの大判。 普通、大判と聞けば、長過ぎて部屋には収まり切らないイメージがあります。 しかしこれは横幅が広い割に縦が短く、4畳半にも収まるサイズ。 この手のキリムの場合、ほぼオーダーメイドで制作される事から、このサイズが必要とされ、何処かの工房に発注されたものです。 オリジナルのキリムで、このサイズ構成で織られる事はまずありません。 制作されたと推定される地域は、ブルガリアとセルビアとの国境付近、当時、戦争の最中にあり、ピロットを含むこの一帯を支配していたのがブルガリア王国です。 オスマン帝国による450年にも渡る支配から独立して30年が経過していたとは言え、融合した文化の記憶を簡単に消去できる訳がありません。 既存の工房や職人にしてみれば、仕事を受けない事には生活が成り立ちません。 地元には支配以前からキリムを織る文化も共存していたため、キリムを織ること自体は自国の伝統文化の一つでもあり、歴史の問題は別にして、細々と継承されていたのでしょう。 いずれにしても、かつての様なキリムの需要はもう望めません。 戦争の最中、輸出用の受注は見込めず、やはり、地元の誰かの発注があって、このサイズに圧縮してデザインを描いていると思います。 きっと、受注生産のような形で生産を請け負っていたのでしょう。 織り子は10台後半から20代の女性が担っていたそうですから、かつての師匠からの手解きを受けた若い女性達。 受注を受けて下図を用意し、2〜3人が長椅子に座って、織り機に向かう姿が思い起こされます。 全体像を見ると下半分が圧縮気味なので、トルコ風に初めから途中で変更するつもりで織り始め、半分を超えた辺りで完成予定図と照らし合わせ、メダリオン模様を圧縮していったような気がします。 見事だと感じるのは、その精巧さ。 シャルキョイなら当たり前かもしれませんが、アナトリアのキリムでは変形があるものなのに、見事な四角い形に出来上がっているのが見て取れます。 そのデザインは、生命の木で5つのメダリオン模様とその隙間を手裏剣のような形の鳥模様で埋めてあり、模様の過密度ではアンティークをも上回ります。 シャルキョイの場合、曲線つづれ織りとう独自の技法のお陰で曲線を描く事が出来ます。 普通の平織りの手法も使いながら、曲線が必要な部分では斜め方向にスリットを入れて細分化する事で、部分的に曲線を表現出来ます。 分かり易いのが、隙間を埋める鳥模様の部分。 この模様の輪郭に沿って斜め方向にスリットが入れられ、一列毎に切り替えを行っているのが見て取れます。 同様に、生命の木も葉の輪郭にスリットを入れて仕上げています。 これだけ模様が過密になると、それだけスリットも多く取る必要があるにも関わらず、色糸を取り換えながら規則正しく模様を織り上げているのは、やはり職人技。 既にキリムの需要が無くなって尚、この大掛かりな設備を保有し、その上で、昔と変わらず、それ以上に手間暇のかかる手法を選んだのは、流石という他ありません。 画像上、黒い部分は所々色むらが出ています。 ご存じのように黒色は合成して染めてあり、その濃淡が現れたので、こうして色むらが出ます。 赤色はマナストゥル風の色むらが出ており、断定は出来ませんが良い色です。 他は化学染料で間違いないところですが、その配色は昔ながらの天然色のパターンを採用しているので、風貌はアンティーク調です。 また、接写した画像ではポツポツと経糸が見える部分があります。 太めの糸で織り込めば隙間も埋め易いですが、アナトリアのキリムほど緯糸が太くはない事、糸の偏りが生じ易い曲線つづれ織りの影響に加えて、いくらか使われる事でそれが顕著になったのだと思います。 これを制作するのに10ヶ月位の期間を要した筈。 その前の下準備、糸を紡いで染色するといった所までを含めると、優に12ヶ月の歳月は必要です。 今考えると途方もない苦労、同じ事をするならばどれ程のコストが掛かるのかと考えましたが、費用をいくら積み上げても不可能な気がします。 |
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