キリムの店*キリムアートアトリエ |
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r35
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産地 | レイハンル HATAY REYHANLI KILIM |
年代 | 1820年頃 |
大きさ | 345*155cm |
価格 | お問い合わせ下さい |
錚々たる顔ぶれの業者が揃うイスタンブルで、誰も見た事がなかった超高品質なハタイレイハンル。 高品質で薄いキリムを得意とするレイハンルの中でも群を抜いて優れた緻密さ、緯糸には髪の毛のような極細の糸を使い、このサイズながらとても軽く、重厚な大きめセッヂャーデサイズくらいの重さしかありません。 この極細の緯糸は、一般の家庭で容易に入手できるものとは違い、素材から機材に至るまで特別な材料が揃っていたハタイの工房ならでは、キリムの最盛期ともの謳われた18世紀末の名残を留めた逸品と言えるでしょう。 そのような超一流の工房作品、おそらく受注生産品である本品は、真ん中に模様がありません。 この模様の無いデザインは、絶対的に数量が少ないハタイ産の古いキリムに不思議と共通して見られる事から、その地域性が良く現れていると言えます。 当然、このタイプのキリムはその必要性があって制作されたもので、それぞれに異なった装飾が施され、模様のない部分の大きさ(長さ)も様々です。 特にこのレイハンルでは、細いボーダー部に続くエリベリンデが装飾面のクライマックスに到達する領域になり、メインに変わるフィールドとしての役割を果たす所、模様の無い部分はその必要性の無い所である事を示しています。 この何も語る事のない無地の深紅は、そこへ立ち入る事を拒絶するかのような強いインパクトがあり、反対にその中に入ればキリムの上にある者を守ってくれるようです。 ここで、少しコチニールの赤について触れておきます。 赤色色素において、最高の美しさと称されるコチニールですが、コチニールが輸入される以前の古い世界では、赤色の染料として珍重されたケルメス(虫)がありました。 しかし、このケルメスが採取できたのは地中海やアラブ世界のごく一部の地域でしかありませんでした。 そのため、生産性の高さ、そして、10倍もの反応性があり安定した色合いを生み出すコチニールがそれらを駆逐する事は容易であり、ケルメスを使う習慣は一気に廃れました。 1540年頃には確立されたそのコチニールの生産もほぼ全量をメキシコからの輸入に頼り、またスペインが独占的にその利権を掌握していました。 このメキシコ産のコチニールが、気候風土の似たカナリア諸島での養殖に成功したのが1835年頃です。 ここから一気に隆盛を極め、養殖に成功してから僅か35年、1870年頃には生産量で全盛期に入りました。 しかしそれと同時に衰退期へと突入し、かつとてコチニールがケルメスを駆逐したように、今度は1858年に偶然発明された化学染料がその座を奪う事になりました。 この年次推移は西洋世界におけるもので、アナトリアとは少し時間差があります。 では、このこのハタイに使われている「コチニール」はどのような物なのでしょう? その疑問を解いてくれたのが、『KOEKBOYA(※注)』の著書で知られるDr.Harald Bohmerでした。 卸屋の元をふいに訪問したBohmer氏から直接聞いた所によると、最初のコチニールはまずアラブ世界、ハタイに上陸し、シリア、イラク(バクダッド)を渡ってイランに伝わった後でアナトリアに広まったので、200年くらい前のキリムでもコチニールが使用されていたという事。 Bohmer氏は明言する事はしませんでしたが、初期のメキシコ産である可能性が極めて高く、それが惜しげもなく大量に使われているという事。 もし機会があるなら、博物館等に所蔵されている18〜19世紀の絨毯、そのパイルがすり切れてしまった赤い箇所をじっくり眺めてみて下さい。 これと同じ赤色が見えてくるでしょう。 他にも、強く存在感を示す緑色は、使用されている面積は少ないですが、濃厚な赤色を引き立てながら自らの存在感を発するとても美しい色です。 また、このハタイにまつわるエピソードもユニーク。 修理にかかる前、特別な洗浄のできるクリーニングに出した所、僅か二日程度屋上での日干しの間に、イスタンブルの有名なギャラリーを運営している方が双眼鏡の類を用いて目ざとく見つけ、誰の所有かを聞きつけて転売の依頼がありました。 その二年くらい後にも、別の店で古いキリムの商談をしていた所、「君が見た事もない物凄いレイハンルを知っている。」とも承りました。 このハタイを買い取った当時、古いキリムは既に品薄になっていましたが、今すぐ消滅するという危惧の無い頃です。 今ではよくぞ買い取ったものだと、自ら感心すると同時に同業のトルコ人業者の言った「今直ぐは迷うところはあるだろうが、10年経った時に良い物を買ったと分かる。」という言葉が、少しずつ身にしみて感じられるこの頃です。 |
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※注) 『KOEKBOYA』を扱っています。ご希望がありましたら、お問い合わせ下さい。 |
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