キリムの店*キリムアートアトリエ |
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レイハンルの祈祷用キリム。 祈祷用キリムのデザインとしては、尖塔の付いたダイヤ形メダリオンのマルチプレーヤータイプが良く知られていますが、これはシワス風のミフラブを持っています。 元々、レイハンルにはハタイ独特の物の他に、マラティアやマラシュ、そして、チョルム等と瓜二つのものもあるため、これがシワス風のトップを持つこと自体、特に珍しい事ではありませんが、このボーダーとの組み合わせてあるものは初めて見ました。 多くのレイハンルと呼ばれるキリムの場合、フィールドはレイハンルタイプでも、産地を示すボーダーにはマラティアやチョルムによく似た流水模様が良く用いられています。 しかし、これはその反対、三重のマルチボーダーはレイハンルそのもの、フィールドを埋める小さな模様もレイハンル、ただ一つミフラブのトップだけがシワス風。 理由は推測する他ありませんが、このシワス風のミフラブは「シワスモデル」と呼ばれ、一斉を風靡したスタイル。 シャルキョイにすら、そのメダリオンを取り込んでいる事からも、その人気の程が伺えます。 また、このレイハンルは、その大きさも持ち運びには不向きな大判、定住した家庭で使わる広間に敷く物か、壁一面に飾っておける位の大きさです。 次に、このキリムに使われているこの興味津々のデザインから少し読み解いてみましょう。 まず、外側のボーダーは上下に狼の口、レイハンルにお馴染みのこれらは、キリムの上に邪悪な者の進入を拒む為のもの、左右のボーダーには、この地方らしいベレケット等豊穣を願う数々の装飾。 更に、内側には尺の形をした鳥模様、その内側の白地のボーダーにはレイハンルの花柄、そして、それぞれが繊細な櫛模様で隔てられ、几帳面に定番の「はらみ」も右下に計算尽くの上で取り込まれています。 普通、これほどマルチナボーダー部を備え、賑やかなデザインが織り込まれていると、ミフラブには正反対の空虚なデザインが用いられます。 しかし、このやや細身になったミフラブ本体は、ボーダーより過激になったと感じる程で、ミフラブそのものも美しい色変わりを見せると共に、豊穣を意味する数々の模様が色や形を変えて華やかに飾り立てられ、僅かの隙間でさえも開けておく事を許さなかった様です。 また、別の見方をすれば、外側の赤茶けた背面の部分のみがボーダーを意味し、白い縁取りで取り囲まれた領域は、全てフィールドの外延部とも取れます。 いずれにしても、普段使いにするに明らかに不必要な装飾性は、このキリムが晴れの場で使われる事を想定していたものと推察され、模様の中にさりげなく置かれた数々の足かせ模様もそれを裏打ちしているよう。 やはりこれも若い娘さんが嫁入り道具として持参した類のキリムと思われ、その高度に洗練されたデザインから、外部の専門家に委託して織られた可能性も排除できません。 手間暇を惜しむどころか、敢えて手間暇を掛けている事を見せつけるような仕事振り、ミフラブの大胆な色の切り替えといい、自然に発生する色むらを逆手に取った配色は、一般家庭で家事の合間に織り上げる仕事とはかなり趣が異なります。 |
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